こちらは「8K Video Recorder Community(8KVRC)」という、8K録画に特化したVRChat向けコミュニティに所属されているLemonKaju(@LemonKaju)さんからの寄稿記事になります。
この記事では、VRChat内で高品質な8K動画を撮影するための詳細な設定方法を解説しています。
8K動画撮影に興味のある方はぜひ参考にしてみてください。
まずは、実際にVRChatを8K解像度で撮影した映像をみてみましょう。
プレイヤーの右側にある歯車アイコン「⚙設定」から「画質」を選び、「4320p 8K」に設定して全画面で見てください。RTX 4070 Ti Superクラス以上のGPUを搭載したPCをお持ちの方はこの画質で思い出を残しましょう。
この記事では、「8K Video Recorder Community(8KVRC)」で使用されている8K動画撮影の設定方法を紹介します。8Kの輪を広げていきましょう!
目次
NVIDIAコントロールパネル/モニタ設定
8K(7680×4320)の解像度に対応したモニタをお持ちの方は、Dynamic Super Resolution(DSR)の設定は不要です。8Kモニタをお使いの場合は、DSR以外の設定を行ってください。
4Kモニタを用いた基本設定
- 「3D設定の管理」→「DSR – 係数」でレガシースケーリング「4.00x」にする
- 「3D設定の管理」→「最大フレームレート」を60FPSにする
- 「解像度の変更」でDynamic Super Resolution 7680×4320にする
4Kモニタが無い場合は、4K対応ダミープラグでもOK
4K 60Hzに対応したダミープラグなら1,000円以下で入手できます。例えば以下のような商品です。
従来の4Kモニタの解像度は3840×2160ですが、ダミープラグによっては最大解像度が4096×2160の場合があります。
8K撮影の目的解像度は7680×4320ですが、横解像度4096にDSRの4.00x係数を掛けると8192×4320になってしまいます。
この状態でVRChatを7680×4320で起動すると、両サイドに黒い枠ができますが、OBS側で簡単に調整することができます。
ダミープラグ環境において、HMD(VRヘッドセット)を切断した状態でVRモードで起動すると、勝手にデスクトップモードになる問題が発生する可能性があるため、デスクトップモードで撮影したい場合は、きちんとデスクトップモードを選んで起動してください。
そうすることで想定通りに黒枠が表示されます。
VRChat設定
Windows側のスケーリングの影響を受けないように設定
VRChat.exeのプロパティから「互換性」->「高DPI設定の変更」を選び、「高DPIスケール設定の上書き」にチェックを入れて「高いDPIスケールの動作を上書きする(アプリケーション)」を選択します。
VRChatのインストール場所を変更していない場合は「C:\Program Files (x86)\Steam\steamapps\common\VRChat」にVRChat.exeが存在します。
SteamのVRChatプロパティ 起動オプション
8K環境に設定する場合:
-screen-fullscreen 1 -monitor (8Kモニタの番号) -screen-width 7680 -screen-height 4320 --disable-hw-video-decoding
元に戻す場合:
-screen-fullscreen 0 -monitor 1 -screen-width 1280 -screen-height 720 --disable-hw-video-decoding
--disable-hw-video-decoding
オプションを付けることで、ビデオ再生がCPU処理になります。
2023年秋のVRChatクライアントがUnity2022に更新された後に発生している、動画プレイヤーが黒く点滅する問題を解決できます。
Graphics
- Anti-Aliasing: 基本はX2、Disabledは非推奨です。人数が少ない場所ではX4〜X8に設定してもよいですが、実際に出ているフレームレートを確認しましょう。
- Shadow Quality: High
- LOD Quality: High
- Particle Physics Quality: High
- その他、各種制限設定はすべて無効にしてください
Safety
Noneを推奨します。Normalより高い設定にすると、Show Avatarの手間が増えます。
User Interface
Show Desktop Reticle: OFF (デスクトップモード向け設定。画面中央の点を消します)
Launch Pad → Settings
HUD Detail Level: OFF (デスクトップモード向け設定。Ctrl+Hでも切り替え可能ですが、ミュート状態が分からなくなるので注意)
Nameplate Visibility: 状況に合わせますが、基本的にはOFF(Ctrl+Nでも切り替え可能。OFFにすると多少の負荷軽減効果があります)
Comfort & Safety
Streamer Mode: ON (撮影時に邪魔になる通知を非表示にできます)
Audio & Voice
基本設定は、Master 100%、World 100%、Voices 100%、その他すべて0%としています。
アバターに組み込まれたパーティクルライブを映す場合は、Avatars を100%にします。状況に応じて設定値を調整してください。
・Mic Icon Visibility: Always On
HUDを消し忘れるなどのミスを防ぐため、「Mic Icon Visibility」は必ず「Always On」に設定しましょう。
2023年秋に実装された「Mic Icon Visibility」は、マイクアイコンが自動で表示/非表示されるという分かりにくい仕様です。これを「Always On」に設定すると、以前の常時表示に戻ります。
視野角の設定 (デスクトップモード向け)
Graphics → Common → Vertical Field of Viewから、状況に応じて視野角を設定できます。
Stream Camera
Stream Cameraの設定はVRモードで行う必要があります。
SteamVRやVirtual DesktopのHMD(VRヘッドセット)解像度は極力下げることをおすすめします。
HMDへの送信リフレッシュレート(Hz)は60Hzの倍数、例えば60Hzや120Hzなどに設定してください。
VRモードではVRAMを多く消費するため、使用していないブラウザやバックグラウンドアプリは終了し、マルチモニタ環境の場合は不要なモニタを一時的に無効にしましょう。
Stream Cameraの設定では、Gridをオン、Smoothedをオンに設定します。
拡大値は魚眼歪みを避けるため、可能な限り高く設定してください。
OBS設定
Open Broadcaster Software | OBS
RTX4070TiSuper以上向け8K録画設定
★出力
├出力モード 詳細
└録画タブ
├録画フォーマット Matroska Video (.mkv)
├映像エンコーダ NVIDIA NVENC HEVC
├音声エンコーダ FFmpeg PCM (16-bit)
├レート制御 CQP
├CPレベル 24
├プリセット P1:Fastest
├チューニング 高品質
└マルチパスモード 1パス
★映像
├基本解像度 7680×4320
├出力解像度 7680×4320
└FPS 60
この設定では、軽量プリセットを使ってエンコード負荷を抑えつつ(ただし、デュアルNVEncの使用率は70~80%になります)、非常に大きなビットレートを設定することで高画質を実現しています。
AV1コーデックは現時点では避け、https://twitter.com/bob15633/status/1692115047957590418 の指摘を踏まえています。
音声は、TopazChatが48kHz/16bitを基準としているため、これに合わせるのが良いでしょう。
mp4形式(音声をAACコーデックに変換)が必要な場合は、Windows版iTunesをインストールしてCoreAudio AACエンコーダを使うことを推奨します。
ゲームキャプチャのプロパティ
「カーソルをキャプチャする」のチェックを外します。
アプリケーション音声キャプチャを使用
VRChat以外の音が入らないように設定出来るので便利です。
ダミープラグの影響で両サイドに黒枠がある場合
当該ゲームキャプチャを選択→右クリック→「変換」→「画面中央に置く」
で簡単に調整できます。
音量設定
WindowsのミキサーでVRChatの音量を下げると、OBSの録画音声にも影響するので、VRChatの音量は必ず100%にしてください。マスター音量への影響はありませんので、マスター音量で全体の音量調整を行ってください。
Windows 11の音量コントロールは画像を参照してください。Windows 10の音量コントロールは、Vistaと同様にマスター音量を変更するとアプリケーション個別の音量バーも連動して変化してしまう不便な仕様になっています。
そのため、Windows 10をご利用の方は「EarTrumpet」の導入を強く推奨します。
撮った8K動画の取り扱い
再生ソフトとしては、MPC-BEまたはVLCがおすすめです。
撮影したmkvやmp4の動画をそのままYouTubeにアップロードできます。
https://www.youtube.com/upload
YouTubeの再生設定では「常にAV1を使う」がおすすめです。
https://www.youtube.com/account_playback
簡単な動画のトリミングなら、無料で8K対応の「LosslessCut」で十分です。動画編集をしたい場合、現時点で本格的に8Kに対応した無料ソフトは存在しません。
有料ソフトなら「DaVinci Resolve Studio」がおすすめです。Premiere Proはmkv形式に非対応なので、mp4形式とwav形式に分離するか、最初からmp4形式で撮影する必要があります。
いずれの場合も、複数の8K動画を編集する際はプロキシ機能の利用が不可欠です。
撮影の技法に関しては、「【VRChat】無料でエモい映像を作ろう!|甘里もち」という記事が詳しいのでご参照ください。
ここまでの設定を行えば、あなたも8K動画を撮影できるようになります。
RTX4070TiSuper以上があるのに8K動画撮らないのは無茶苦茶もったいないぜ— れもん果汁🍋 (@LemonKaju) March 19, 2024
YouTubeアップロードの際の注意点
YouTubeに8K動画をアップロードする際は、いくつかの注意点があります。
YouTube側で8K動画を処理するのに非常に時間がかかります。たとえ数十分の動画であっても、処理に数時間を要する場合があります。8Kの処理状況を確認できないため、適切に進行しているかが分かりづらくなっています。
経験則として、処理に2週間以上かかった場合はタイムアウトしてアップロードが失敗する可能性があります。つまり、3時間を超える長尺の8K60fps動画をアップロードすると、最後まで処理が完了しない恐れがあります。
そのため、長時間の動画をアップロードする場合は、あらかじめ適切な長さに分割しておくことをおすすめします。
8Kの大容量動画は、YouTube側での処理に多大な時間がかかり、進捗が分かりづらく長時間の動画ではタイムアウトのリスクがあることに注意が必要です。
状況に応じて動画を分割するなど、適切な対策を講じましょう。
おまけ
全天球カメラシステム【MA対応】#360VRC – ねこのいる工房
全天球カメラシステムの Cam1〜6 のサイズは 2560×2560 です。
プレイヤーの右側にある歯車アイコン「⚙設定」から「画質」を選び、「4320s 8K」に設定して全画面で視聴してください。
VRモードのStream Cameraを使えば、縦8KのYouTube Shortsも撮影できます。
参考動画:https://www.youtube.com/shorts/w0KLn7vmTdg
8K撮影用に設定したプロファイルとシーンを複製し、基本解像度と出力解像度を4320×7680に変更します。
次に該当するゲームキャプチャを右クリックで選択し、「変換」→「時計回りに90度回転」を選びます。
ダミープラグ環境の場合は更に「画面中央に置く」を実行する必要があります。
これで縦8K録画の準備が整います。
ちなみに、Radeon RX 7900 XTXを持つ友人にハードウェアエンコーダーの検証を手伝ってもらった結果、リアルタイム8K 60fpsは現時点では不可能であることが判明しています。
今後リアルタイム8K 60fpsに対応したRadeonの後継モデルが登場した場合は、ぜひ教えてください。
「8K Video Recorder Community(8KVRC)」にご参加ください!
「8K Video Recorder Community(8KVRC)」は8K録画に特化したVRChat向けのコミュニティで、2020年代の8K映像ソースを後世に残す活動を行っています。
VRChatイベントの主催者から8K録画の依頼を受け付けています。
次の条件を満たすPCをお持ちで、8K録画技術や8K動画編集に関心がある方は、是非メンバーとして参加してみてください。
⭐8Kビデオ撮影者 参加条件
・RTX4070TiSuper16GB以上(デュアルNVEnc搭載)
・16コア最大動作周波数5GHz以上のCPU
・64GB以上のRAM
・シーケンシャルライト400MB/s超の空き2TB以上のストレージ
・4K+DSR4․00x又は8K
・送受信共に100Mbps以上安定
・XInput🎮
・OBS設定やiTunes(CoreAudio AAC)等の協力— 8K Video Recorder Community (@8KVRC) February 1, 2024
よくある間違いで「画面に合わせる」を選んでしまうと映像がつぶれて左右の黒枠が見えてしまいます。その際は「変換をリセット」を選んでから「画面中央に置く」を選ぶと直ります。