わずか127gという世界最軽量の軽さと、高解像度OLEDディスプレイを備えたVRヘッドセット「Bigscreen Beyond」
半年前の予約開始から大きな期待を集めていましたが、米国からの先行発送を経て、3月5日についに私の手元にも到着しました!
この記事では、INDEXから乗り換えを検討している方や「Quest 3」との違いに興味がある方へ、VRChatでの実際にプレイ体験を通じてその使用感についてレビューしていきます!
目次
「Bigscreen Beyond」のメリット・デメリット
まずは、私が実際に「Bigscreen Beyond」を使ってみて感じた、GoodポイントとBadポイントをざっくりとまとめてみました。
発売から約10日間の使用経験を踏まえ、私が感じた部分は上記の通りです!
先にオーディオストラップについて触れておきますが、私もBeyondと同時に注文自体はしているのですが、発売が4月に延期されたためまだ検証ができていません。そのためストラップを含む装着感やスピーカーの音質に関する評価は現時点では保留とさせていただきます。(Beyond本体にはスピーカーが搭載されていません。)
ただ、製品ラインナップを見ていると、オーディオストラップの他にも視度補正レンズや専用ケースなども多数用意がされているため、専用のアクセサリー自体はそれなりに出揃っている印象ですね。
いろいろと言いたいことがありすぎるので、詳しく掘り下げていきます!
外観
では、ここからはパッケージの開封から外観などを見ていきます!
「Bigscreen Beyond」のパッケージは驚くほどコンパクトで、INDEXコントローラーやQuest 3の箱よりも小さく設計されています。
開封すると開発に携わった制作者たちのサインと「これは、あなた専用のVRヘッドセットです」といった内容のメッセージが目に入ります。こういうのってオーディオ系のガジェットにもよく書かれていますが、なんかいいですよね~。
パッケージ内部は重箱のような仕組みになっており、最上段にはBeyond本体とフェイスクッションをはじめとする接続パーツ、中段にはPCとの接続に必要なリンクボックス、最下段にはUSB-Cケーブルが同梱されています。
付属品を取り出してみました。各アイテムが専用のスペースに配置されているため、開封時にはすぐにセットアップを始められるようになっています。
PCと接続するためのUSB-Cケーブルは約5メートルの長さがあり、使用時に長さが不足する心配はなさそうです。ケーブルにはそれなりの硬さがありますが、INDEXのケーブルと比べると細くて柔軟性があるため、取り回しは比較的容易そうです。
こちらは同時に注文した視度補正用のレンズですが、ここで問題が発生!
私は半年前に「Beyond」を予約したのですが、その時の視力に合わせて視度補正レンズを注文していたため、現在の視力との差で視界がぼやけてしまう事態に…。
実は商品の発送前にこのことをサポート窓口に問い合わせていたのですが、残念ながらレンズの視度変更などの対応には応じられないとのことでした。
商品がまだ手元に届いていない段階でのことを踏まえた上で対応が難しいとの回答は、少々モヤモヤした気持ちになりましたね…。
価格が高額なのと発売日が延期していただけに、初期に予約していたユーザー向けに何らかの対応が欲しかったなーっと思ってしまいますね…。
接続性について
すでにINDEXやVIVEを使用している場合は、ベースステーションやVIVEトラッカーなどの周辺機器はそのまま使用できます。
元々使っていたヘッドセットと接続ケーブルをBeyondに付属されているものと交換するだけで済むため、セットアップが簡単なのは助かりますね!
Beyondの左側にあるUSB-C端子はPCとの接続専用です。ここに接続ケーブルを差し込むことで、デバイスをPCに接続します。
一方、右側にもう一つのUSB-C端子がありますが、こちらは有線イヤホンや外部マイクなどのオーディオ機器を接続するためのオプション端子として利用可能となっています。
リンクボックスには、DP端子×1とUSB3.0端子×2の合計三本のケーブルが備わっており、これらをPCの対応する端子に接続します。事前にPC側の端子を空けておきましょう。
リンクボックスを接続すると「Bigscreen Beyond Driver」という専用ドライバーと設定ソフトが自動でPCにインストールされます。
最後にSteamVRを開き、ルームスケールの再設定とコントローラの再ペアリングを行います。これでBeyondの使用準備が完了です!
無印VIVEやVIVE Proに比べると、接続ケーブル類もすごく簡潔になりました!
個人的にはACアダプターが不要なのが最高です!
重さや装着感について
重量・サイズ感
Beyondを購入検討している方の多くが気になっているのが、本体の軽さや装着感についてだと思います。
BeyondはVRヘッドセットとしては最軽量クラスの重量となっており、たったの127gの重さしかありません。
手持ちのiPhone 8が152gであることを考えると、スマートフォンよりも軽いBeyondの重量には驚かされます!
この軽さは長時間使用するVRヘビーユーザーにとっては、間違いなく最高の武器になります!
ほら、今手元にあるスマホよりも軽いんだよ!やばくない?
サイズ感や薄さに関しても、PS4コントローラーとほぼ同等か、それよりもやや小さいサイズを実現しています。このコンパクトさはVRヘッドセットとしてはあまりにも異質で、強烈なインパクトがあります。
これでスタンドアロン型なら、バッグに忍ばせておくだけで持ち運びできる理想的なVRデバイスになれる可能性が…!
ただ、ヘッドセット自体が軽い分、ケーブルの重さや引っ張り感が気を強く感じてしまうのが難点。
特に動きが大きいときは余ったケーブルに引っ張られる感覚が強いため、「ケーブルリール」などを使って重さを分散してやるのがオススメです。
ちなみに、この圧倒的な軽さと柔軟なゴムバンドのおかげで、VR睡眠も余裕でできます。
私はV睡勢ではないので試しに軽く寝っ転がっただけですが、INDEXやQuest 3と比較してもBeyondはいちいち「寝る」ことへのクオリティが高いんです…!
一般的な枕を使用しても違和感がないのはもちろんですが、「目の上に乗せているだけ」という感覚が近く、ヘッドセットの重さをほぼ感じることなく本当にアイマスクを付けているような楽な感覚でリラックスして横になることができました。
おまけに本体がほんのり温かいので、文字通りホットアイマスク状態で目元のケアにも良さそうですね。
同じく軽量なデバイスである「VIVE XR Elite」と比較しても、Beyondの方が明らかに寝ているときの装着感が優れているため、VR睡眠用のヘッドセットを探している方にとっては、Beyondは最高の寝具だと言えます!
Beyondの寝具適性は本当に高いので、これを機会にV睡デビューする人もいそう!(断線してもUSB-Cケーブルを交換するだけでいける)
装着感について
装着感は、一言で言えば水泳用ゴーグルの締め付けを緩めたものといった感じで、フェイスクッションが目元を隙間なく覆っているためか、眼元に若干の圧迫感を感じます。
ただ、これは純正ストラップが顔面を押し付けて固定する「ゴムバンドタイプ」であることの影響も大きい思いますので、別売のオーディオストラップや、サードパーティ製のものが販売されはじめるとまた印象が変わってくると思います。
フェイスクッションは、事前にiPhoneやiPadの「Face ID」カメラを使用して顔の輪郭をスキャンし、個々の顔の形状に合わせてオーダーメイドで作成されます。このフェイスクッションがかなり精巧に作られていて、顔面へのフィッティングはこれまでのヘッドセットとは比にならない程よく、外部の光の侵入をほぼ100%遮断してくれるわけです!
Beyondを装着した状態で電源を切ってみると、まさに「深淵」です。自分が目を開けているのか閉じているのかが分からない程の妙な錯覚には感動すら覚えました。
ほんとに真っ暗で何も見えないのが逆にこわい!
フェイスクッションは軟化性の高いラバー素材で作られており、素材を削り出したかのような切り口はDIY感を覚える方も多いと思います。
ヘッドセット本体が精巧に作られているだけに、フェイスクッションのマテリアルと本体のクオリティバランスのちぐはぐ感が余計にチープに感じられてしまうんですよね…。
また、クッション自体に通気性がまったくないため、ヘッドセット内に湿気が溜まりやすくレンズが曇ってしまうことが多々あります。これについては、ヘッドセットのファンの回転数を調整することである程度対処が可能ですが、あまり回転数を上げると今度はファンノイズが気になるため、調整がシビアな印象を受けました。
それに加えて、フェイスクッションは汗を吸収せず、水分が溜まることで肌トラブルを引き起こす可能性があります。(私も軽い肌荒れが出ました…。)
そもそもこのフェイスクッションがSNS上ではかなり不評のようで、フェイスクッションに厚みがありすぎるとスイートスポットが狭くなったり、視界がボケるという意見も見られるため、今後フェイスクッションに何らかの改良が加えられたモデルが登場することが期待されますね!
頬や額が痛くないのは最高なんですが、通気性0のラバー素材が微妙なのと、ぶいちゃ民って周りが見えない完全な没入型フェイスクッションを望んでいない人も多い印象なので、実は相性が悪い説…!
音質について
続いて、音質について触れていきましょう!
Beyondはスピーカーが非搭載のため、別売のオーディオストラップを購入していない場合は、有線またはワイヤレスイヤホンなどを用意する必要があります。
ただ、そうなると次のポイントが問題として上がってきます。
- Bluetoothイヤホンを利用する場合、遅延が気になる可能性がある。
- イヤホンやヘッドホンを長時間使用すると、耳が痛くなる可能性がある。
これらのポイントを考慮して、ガジェット好きの私がオススメするのが『オープンイヤー型』のイヤホンです。
おしえて!こはこはのコーナー!
『オープンイヤー型のイヤホン』って何?
オープンイヤー型のイヤホンとは、耳を塞がないタイプの新しいスタイルのイヤホンで、従来型イヤホンによくある聞き疲れや耳の中の蒸れ、装着時の痛みなどが軽減された「ながら聴き」に最適化されたイヤホンです!
形状も「耳に引っ掛けるフックタイプ」や「耳たぶに挟み込むイヤーカフタイプ」など、骨伝導型イヤホンとは違って空気の振動によって音を伝達するため、耳から浮かせて装着時の不快感を感じにくい設計になっているのも特徴的です。
また、カナル型イヤホンのように耳にイヤーピースが密閉されていないため、自分の発した声が耳の中で反響して喋りづらいといったこともなく、ボイスチャット用としても非常に優れているイヤホンというわけ!
ただし、オープンイヤー型イヤホンの多くはBluetoothの低遅延コーデック(aptX-LLなど)に対応していないため、やや遅延が気になるかもしれません。
さらにPCに標準で備わっているBluetooth機能の多くは、オーディオ用の音声コーデックに対応していないことが一般的です。このため、PC側のBluetooth機能もオーディオ用のものを別途用意する必要があります。
追加投資が必要ですが、PCに挿すだけで高音質なBluetoothコーデックに対応することができる、オーディオ用のBluetoothドングルも市販されています。気になる方はこちらを確認してみるのがオススメです…!
他にも「VR P10」のような2.4GHzの無線ドングルに対応したワイヤレスイヤホンであれば、ほぼ無遅延で音声を聴くことができるのですが、こちらは密閉性の高いカナル型ということもあって、ボイスチャット用のイヤホンとして見ると少し喋りづらいかもしれません。
将来的に2.4GHzの無線ドングルを使用したオープンイヤー型のワイヤレスイヤホンが登場すれば、ほぼ無遅延で運用することが可能になると思いますので、今後の動向に期待ですね!
ケーブルが気にならないなら、本体右側にあるオプション端子から有線イヤホンを繋ぐのもありな気がします…!
画質について
Beyondの画質については、本体にマイクロ有機ELディスプレイを採用したことで、発色がずば抜けて良くなり、解像度も両目で5Kを超えたことでスクリーンドアも一切感じなくなりました。純粋な画質はこれまで使用してきたVRヘッドセットの中で一番よく鮮明に見えました!
しかし、ここで問題なのがスイートスポットが非常に狭いということ!
例えば、VRChat内で表示されるマイクアイコンを横目で見ると、色収差が顕著に出てしまい、視界がボケてしまうんですよね…。付属のフェイスクッションが厚すぎて眼とレンズの距離が離れすぎてしまい、視野角が狭くなっているのが原因との話もあるようです。
視度補正レンズの交換についてサポートに問い合わせたときに、この事も聞いてみたのですが、「より薄いフェイスクッションを製造する余地がある」とのご回答をいただき、新しく薄型のクッションを製造して送っていただけることに。
既にBeyondを所持している方で、視界の狭さやスイートスポットの狭さが気になる場合は、一度サポートに問い合わせてみるといいかもしれません。
気になった点はまだあります。それはゴッドレイが非常に目立つということです。
有機ELはパネルのピクセル自体が発光を制御しているため、夜景や暗がりの「黒」の表現力はずば抜けて高いのですが、このパキパキに決まった「黒」に月のような眩しい光源が映り込むと、陰影差によって光が無数の玉模様(ゴッドレイ)となって拡散してしまい、それがレンズ内に映り込んでしまうんですよね。
これがVRで遊んでいると至るところで目立ってしまい、ときにはプレイに集中できないレベルで主張してくるのが非常に気になりました…。
ゴッドレイの発生は、暗い場所だとアバターのフェイスミラーを「ON」にするだけでも発生してしまうほどデリケートで、INDEXと比べてもピーキーさが際立っているように感じます。
輝度を下げると多少マシになりますが、それでも発生自体を抑えることはできません…。視度補正レンズが悪さをしているのかと思い外してみましたが、裸眼でも見え方は変わりませんでした。
最後に気になったポイントとしては、解像度が向上したことによるVRChatのフレームレートの低下です。
当たり前と言えばそうなのですが、私のPC環境「Ryzen 7 7800X3D」と「RTX 3090」の組み合わせで、INDEX使用時には約40fps出ていたのが、Beyond使用時では約30fpsしか出なくなりました。
INDEXから解像度が大きく向上したので当然なのですが、人の多いシーンでは処理落ちやカクつきが発生するなど、今まで普通に過ごせていた環境でも耐えられなくなる可能性があることを購入前に知っておく必要があります。
対策としては解像度やグラフィック設定を下げる方法もありますが、せっかく解像度が高く映像美の優れたBeyondを購入したのにも関わらず、解像度を下げるというのはテンションが下がると思いますし、それならばいっそのこと最新型ハイエンドグラボに載せ替えたほうがいいのでは…?という考えが頭をよぎってしまい、お財布にとって非常によくありません。
ここまで厳しい見方をしてきましたが、単純な画質や解像度に関しては文句なしに「次世代のHMDだ!」といった具合に進化していますし、細かい文字もクッキリと読みやすく、映像品質自体は本当に素晴らしいと思います!
ただ、それをVRChat用のヘッドセットとして上手く落とし込めているかと言われると別の問題であり、現状ではストレスなく快適に遊べるVRヘッドセットとは言い難いのが率直な感想ですね…。
遮光性が高い代わりに蒸れやすいフェイスクッションや、画質が良くてもゴッドレイが目立つなど、「あっちが立てばこっちが立たず」という状況が多く、なかなか評価の難しいヘッドセットです…。
トラッキングについて
トラッキングの安定性について、BeyondはVIVEやINDEXと同じようにベースステーションを利用したアウトサイドイン方式を使用しているため、トラッキング精度自体は高めです。
しかし、Beyond本体が小さすぎるためか、手や障害物によってセンサーが隠れることが多く、ロスト時に画面がガクガクするような場面もしばしば見られました。
これらはベースステーションの設置数を増やすことで回避できるようなので、可能であれば3個以上のベースステーションを設置することが望ましいと思います。
他にも髪の毛で隠れる場合もあるようなので、要注意ですね!
総評:惹かれる魅力があるなら「Beyond」はその期待に応えてくれる
総合的に見ると、Beyondは軽量かつ高解像度の有機ELを搭載したHMDを求めるユーザーには十分満足できる製品だと思います。
しかし、高いPCスペックの要求、狭いスイートスポット、顕著なゴッドレイの問題は、特にVRChatのような広い視野が求められる環境では扱いが難しく、結局のところ「ギークなデバイス」という印象が強いのが本音です。
一方で、Quest 3はBeyondほどではないにしても解像度が高く、液晶の発色も良好で、PCとの接続も有線接続とワイヤレスの両方に対応しています。
また、外部が見えるカラーパススルーカメラや、スタンドアロンで動くアプリも数多く出揃っているため、これだけの機能を持ち合わせたうえで、Beyondの半値以下の74,800円という手頃な価格を実現しているのには改めて驚かされますね…。
Beyondを使うにはベースステーションやコントローラーが別途必要ですが、Quest 3ならコントローラーも付属されていますからね…!
ただ、それでもBeyondには他のヘッドセットにはない圧倒的な軽さがあります。
VRをヘビーユーズする人ほど、日々の使用でのヘッドセットの重さに悩まされるケースも多く、このBeyondの「軽さ」という武器は唯一無二のメリットだと感じますし、首や肩の凝りに悩まされている方や、ダンスなどのアクティブな動きを思いっきり楽しみたい方など、兎にも角にも「軽さ」に重きを置いているユーザーには間違いなく刺さるデバイスであることは断言できます!
気になる点は確かに多いですが、私自身もbeyondを購入したことを一切後悔していませんし、基本的なドライバーや動作に関しても大きな不具合もなく、非常に満足しています。
INDEXからの乗り換え先として考えても、有機ELによる画質の向上や解像度の増加、本体の軽さやマイク品質の良さなどを考慮すると、Beyondを使うメリットは非常に多く妥当な選択肢だと言えるでしょう。
汎用性やトータルバランスで見ると、やはりQuest 3が選択肢として上がりますが、マイクロ有機ELによる圧倒的な画質、あまりに強すぎる「軽さ」に心が惹かれるのであれば、この小さなモンスターは新時代のVR HMDの可能性を秘めたパンドラの箱だと言えるでしょう…!
Link:bigscreenvr.com
つ、ついに「Bigscreen Beyond」がきたーーー!!