少し前までは、VRChatでのフルトラと言えば「VIVEトラッカー」を使った方法が主流でしたが、ここ数年で”HaritoraX”や”mocopi”などの外部センサー不要のトラッキングデバイスが数多く登場していますね!
“Meta Quest 2″の普及により、相対的にベースステーションを所有する方が減っていることに加えて、内蔵センサー式の導入のしやすさや、価格の安さが購入までのハードルを大幅に下げているのではないかと思います。
その中でも、今回レビューする「Uni-Motion」は、完全ワイヤレス & 6点トラッキングが可能なフルトラ用デバイスとして2021年12月に登場しました。
発売から約一年経った今でも品切れが続いている大人気の製品になりますので、この記事では「Uni-Motion」の外観や特徴、実際にVRChatでの使用感などをご紹介していこうと思います!
目次
Uni-Motionとは?
スペック
寸法 | 60 mm x 40 mm x 16 mm |
---|---|
動作電源 | 1.5 V 単3乾電池(AA,LR06) |
動作時間 | 24時間以上 |
センサ | 9dof IMU/AHRS (加速度・角加速度・地磁気) |
加速度計範囲 | ± 16 g |
ジャイロスコープ範囲 | ± 2000 dps |
磁力計範囲 | ± 4900 uT |
無線方式 | 2.4 GHz (IEEE 802.11,Wi-fi) |
フレームレート | 60fps、70fps、144fps |
レイテンシ | ~ 10 ms (70 Hz, 144 Hz) ~ 33 ms (60 Hz) |
「Uni-Motion」は、加速度・角加速度・地磁気の3種類のセンサーを内蔵した、完全ワイヤレスかつ外部センサーが不要なトラッキング用デバイスです。
Uni-Motionでは「両足・腰・胸」の6点にセンサーを追加することで、ヘッドセットやコントローラーと合わせて合計9点トラッキングでVRの世界を体験することが可能となっています。
価格は2023年1月現在で49,500円(税込み)です。
- 胸
- 腰
- 右側太もも
- 右側ふくらはぎ
- 左側太もも
- 左側ふくらはぎ
また”Uni-motion”は、VRChat以外の様々なアプリに対応しています。
例えば「バーチャルモーションキャプチャ」と合わせて上半身モードで使えば、Vtuber活動や配信といったコンテンツにも、VRヘッドセット無しでアバターとの動きをシンクロさせることが可能です。
Uni-motionは、VIVEベースステーションに使用されている「Lighthouse」環境に依存しない完全ワイヤレスのトラッキングシステムにより、それ単体で様々なVRソフトに活用できる強みを持っているのです。
また、電源方式は昨今では珍しい乾電池式を採用しており、最大で連続24時間の長時間使用することができます。
HaritoraXが最大で10時間ということを考えると、これだけでもアドバンテージがありますし、充電のし忘れがなく電池さえあれば即座に使用できることも大きなメリットになるでしょう。
ただし、乾電池式はバッテリー充電式とは違って、電池交換の手間や電池代によるランニングコストが悪いというデメリットも同時に抱えているため、この辺りは好みが分かれそうなポイントだと言えますね!
3つの内蔵センサーと、合計9点トラッキングかつ完全ワイヤレスというのが「Uni-Motion」の最大の特徴です!
ただし、乾電池式は交換の手間などを考慮すると好みが分かれそう!
開封&付属品のチェック!
届いたパッケージは、白地の元箱に文字とロゴだけがプリントされているシンプルなものでした。
開封すると本体が収納されたポリケースと付属品が同封されていました。
付属品には、体に装着する”固定ベルト”と”ラバー素材の固定ケース”が各6個ずつ付属されており、なかなか豪華な印象です。
- Uni-sensor ×6
- Uni-station×1
- 脚用ベルト×2、大腿用ベルト×2、腰・胸用ベルト×2
- センサー固定用ホルダー×7
- センサー識別シール
- USB MicroBケーブル
- 案内用紙、保証書
ポリケースを開封するとこんな感じ。
中には体に取り付ける「Uni-sensor」が6個と、送信されたトラッキングデータを受信するための「Uni-station」が1個同封されていました。
「Uni-sensor」自体はいわゆるフリスクサイズでかなり小さめ。
本体重量は電池込みでも約42gとかなり軽量です。
全体的にポリカーボネート感が強くなかなかチープな印象を受けますが、軽量化をする上でこのチープさは実は理にかなっているようです。
ボタン類は、左上部に電源とペアリングを行うボタンが配置されていました。
裏面には単三電池を入れるソケットとカバーが付いています。
カバーは若干硬いですが、コツを掴めばスムーズに電池を入れ替えることができるようです。
こちらはトラッキングデータを受信するための「Uni-station」です。
「Uni-sensor」とは違い、電池不要でMicro-USBケーブルと接続してPCの周りに設置します。
付属されているラバーケースは自分で組み立てるセルフ式になっている為、購入時には最初に組立作業が必要になります。
組み立て終わったら、付属の固定ベルトを通して写真のようにセンサーをセットすれば準備完了です。
装着してみて感じたこと
Uni-Motionの装着は、「胸・腰・両足の太もも・両足のふくらはぎ」の6点に専用の固定ベルトを使って着用します。
VIVEトラッカーの場合だと「腰・両足」の3点さえ追加すれば、とりあえずはフルトラ状態になることができますが、Uni-Motionの場合だと内蔵センサーだけで位置情報を取得する必要があり、両足の太ももの付け根とふくらはぎの上部に2点ずつ、腰と胸の合計6点を毎回装着するのは意外と手間に感じてしまいます。
慣れてしまえば少しはマシにはなりますが、例えばアバターの挙動確認などの軽くフルトラ状態になりたいという微妙な場面であっても、いちいち6点をベルトで固定しなければならないのは結構面倒くさいところ…。
着用の観点だけで見れば、3点で運用できる”VIVEトラッカー”や、着用箇所の少ない”HaritoraX”に分がありそうですね。
重さをほとんど感じないのは嬉しいんだけど、着用の際に意外と手間が掛かるのはちょっと残念。
Windows側での初期設定
Uni-Motionを使用するためには、予め公式サイトから「Uni-studio」という専用のソフトをダウンロードしておく必要があります。
Uni-studioのダウンロードには購入時に同梱されているパスワードが必要のため、パッケージ類を間違えて捨ててしまわないように注意しましょう!
また、同時に公式ページからドライバーもインストールしておく必要があります。
- 付属のUni-stationをUSBポートに接続する
- 「SteamVR」を起動する
- 「Uni-studio」を起動する
- キャリブレーションを実施する
- 「VRChat」を起動する
まず、初めに”Uni-station”をPCのUSBポートに挿します。
デバイスを認識するためには事前に公式サイトよりドライバーをインストールしておく必要があうため、忘れずにダウンロードしておきましょう。
続いて、SteamVRを立ち上げてから「Uni-studio」を起動します。
起動手順を間違えると、SteamVRが「Uni-studio」を感知しないため、Uni-motionを使用することができません。
Uni-studioが起動できたら、各Uni-sensorの電源を入れます。
ドライバーが正常にインストールされていると、電源の入っているUni-Sensorがソフト上に緑色で表示されますので、確認が終わったら左下の3Dモデルのアイコンをクリックしてキャリブレーションを行います。
公式サイトにある動画のように、センサーをケース内に入れてから約20~30秒ほど“空中で8の字を描く”ように回すことで素早くキャリブレーションができます。
このように各Uni-sensorが同じ方向に回転して揃うようになれば、キャリブレーションは完了です。
一つでも同じ動きにならない場合は、再度キャリブレーションを行って揃うまで続ける必要があります。
なお、こちらのキャリブレーションは初回のみ必要で、次回からは電源を入れるだけでOKです。
使用中にキャリブレーションがズレてくる場合は、「キャリブレーション」をクリックして「簡易キャリブレーション」を行うことで素早く補正することができます。
こちらはVRChat内でのキャリブレーションと同じように、アバターと同じポーズをして各センサーの位置を調整する方法です。
胸のセンサーの向きが正しくなるようにチェックを入れたあと、「開始」をクリックすることで素早くキャリブレーションが行えます。
ロットナンバーによって胸のセンサーの向きが反転する場合があるそうです。
詳しくは公式ページより確認してみてください。
ソフト内で設定できる項目
「Uni-studio」のオプションからは、各センサーの割当てや、Vtuberや3Dモデルで上半身を動かしたいときに使用できる「上半身モード」、VRChatなどで寝ながらキャリブレーションができる「寝キャリブレーションモード」を有効化することができます。
他にも床埋まりを防止するために床のオフセットを設定したり、頭部にVIVEトラッカーを使用したりなど細かな設定が可能なため、購入時に一度確認しておくことをオススメします。
VRChatでの使用感
それでは、実際に「Uni-motion」を使ってVRChatにログインしてみます!
装着感について
まず、装着感についてはかなり快適です!
本体重量が一個あたりわずか42g程度しかなく、VIVEトラッカーの74gと比べると40%以上も軽量かつコンパクトなため、装着した際の重さやかさばりを感じることはほぼありませんでした。
さらに、Uni-motionはVIVEトラッカーと同じように完全ワイヤレスで動作することで、足首を絡めるような動きをしてもケーブルを足に引っ掛ける心配もなく、ストレスを感じることなく快適に動作してくれました!
トラッキング精度について
肝心のトラッキング精度についてですが、まず前提として外部センサーを使用する「VIVEトラッカー」と比較すると、全体的なトラッキング精度や追従性、足の細かな角度調整や遅延などはどうしても見劣りはしてしまいます。
この辺りは価格相応というか、さすがにベースステーションと合わせて10万円超えのVIVEトラッカー3台に比べるのは酷というか、精度で劣ってしまうのは仕方のないことでしょう。
逆に言ってしまえば”Uni-motion単体”でフルトラが実現可能という点で考えると、トラッキング精度や安定性が犠牲になるのは、嫌味ではなく“トレードオフ”という言葉がしっくりくる感じですね。
ただ、”Uni-motion”の真の強みはそこには無くて、例えば”VIVEトラッカー”だとVRヘッドセットを被りながらPCデスクに座るとどうしても足元のトラッキングが飛びがちですが、内蔵センサー式の”Uni-motion”だとそのような心配はまずありませんし、体育座りなどの腰トラが隠れてしまう場面でも、体勢が大きく崩れるといった心配もいりません。
また、VIVEトラッカー特有の『腰飛び』が起こる心配もないため、外部センサー式のように外的要因によってトラッキングが乱れにくいことも、内蔵センサー式の大きな強みだと言えます!
ただし、地磁気センサーは磁力の強い物の影響を受ける可能性があります。
価格を考えるとVIVEトラッカーよりもトラッキング性能で劣るのは仕方のないことですが、内蔵センサー式ならではのメリットもしっかりと感じることができました!
ただし、足先から足先にかけてのトラッキングが甘い
今回、動画を撮影してみて一点気になったことは、動画後半にもあるように「Uni-motion」は特性上ふくらはぎの辺りまでしかトラッキングできないためか、足先の動きを反映させることができません。
このため、アバターの足先は常に上を向くようになってしまいますし、足先が先端に行けば行くほどトラッキングが甘くなり、少し股下の角度を少し変えただけでもアバターと実際の身体との異差を感じやすくなってしまいます。
足先のトラッキングが甘いのは「Uni-motion」のウィークポイントですね。
※HaritoraXは足先までトラッキングが可能
なお、足元が滑るドリフト現象については思ったよりも違和感はなく、ダンス等の激しい動きをしないのであればギリギリ許容範囲だと感じました。
まとめ
最後におさらいとして、「Uni-motion」のいいところ・悪いところをまとめてみました。
総評としては、VIVEトラッカーのような正確なトラッキング性能を求めない方や、ローコストでフルトラ状態になりたい方、VR内でダンスを踊ったり激しい動きをしない方にとっては非常に使いやすいフルトラデバイスだと思います。
特に価格の面では、VIVEトラッカーとベースステーションを用意するよりも半額以下のコストでフルトラになれてしまうのは、Lighthouse環境がない方にとってはかなり魅力的なポイントではないでしょうか?
ただ、製品特性上『手軽にフルトラができる!』というのがコンセプトだと思うのですが、実際に使ってみると、アバター確認のためにちょっとフルトラになりたいといったシーンであっても、わざわざ6点もセンサーを装着しなければなりませんし、コンセプトと実際の運用方法とのギャップに少し違和感を感じてしまうのも事実です。
とは言え、Uni-motionにはVIVEトラッカーをも凌駕する数々のメリットと魅力があるトラッキングデバイスなのは確かなので、気になっている方は公式サイトで在庫の有無や予約状況を確認してみることをオススメします!
軽くポーズを取ったりステップを踏んでみたり、精度はあまり求めないけどリアルの動きを低価格でVR内に反映させたいという、フルトラ初心者さんには十分アリな選択肢だと思います!
こんにちは!桜乃こはくです!